作戦会議のホンネ
業務委託プールからエンゲージメントで正社員化する、スタートアップ採用の新常識
「人手が必要なのはわかってる。でも、正社員を雇う決断がまだできない」──そんな状態が続いている経営者は、実は多い。
結論から言う。それで正解だ。
「最初から正社員を雇わなければ」という思い込みは、今の時代の採用においてはむしろ危険に近い。
この記事では、採用支援で実践してきた「業務委託プール→正社員化」という手法と、それを支えるエンゲージメント設計の全体像を共有する。
採用に悩む前に知っておいてほしい、もう一つの選択肢の話だ。
業務委託で回すことには、ちゃんとした合理性がある
日本の解雇規制という現実の前で
正直に言う。日本で正社員を雇うのはリスクが高い。
一度雇用したら、よほどの事情がなければ解雇できない。
パフォーマンスが出なくても、会社の方針と合わなくても、「辞めてほしい」が言えない構造になっている。
一方、業務委託なら事業の状況に合わせて柔軟に動ける。
クライアントワーク中心のビジネスモデルであれば、案件の利益率を見ながら「この案件にはこの人をアサイン」という判断がしやすく、コストの可視化も格段にしやすい。
業務委託で回すのは「決断を先送りしているだけ」ではない。リスクを管理しながら事業を伸ばす、合理的な選択だ。
ただし、「業務委託のまま」には越えられない壁がある
業務委託を活用する中で、多くの経営者がぶつかるのがエンゲージメントの限界だ。
副業型の人材は、本業の状況次第でいなくなる
業務委託で働く方には様々なパターンがある。
中でも注意が必要なのは、本業を持ちながら副業として関わっているケース。
本業が忙しくなれば稼働が落ちる。本業で昇進すれば副業をやめる。本業の会社が副業禁止になれば、翌月には消える。
エンゲージメントを高める努力をしていても、「本業が最優先」という前提がある以上、組織への帰属意識をコントロールするのは難しい。
「いい人材だと思っていたら、ある日突然いなくなった」は、業務委託あるあるだ。
今の市場で有効な「プール人材戦略」という選択肢
では、どうすればいいか。弊社が実際に取り入れているのがプール人材戦略だ。
媒体をハックして人を集め、プールを作る
業務委託専用の媒体は近年急増している。
それらをうまく活用しながら、まず「会ってみたい人材」を集めることから始める。
この段階では採用ではなく、パイプライン構築に近い感覚だ。今すぐアサインできなくても、定期的に連絡を取り合いながら関係性を温めておく。これがプール人材の母集団になる。
ギルド感を育てながら、稼働を少しずつ上げていく
プールに入った人材に対して、弊社が実践するエンゲージメント施策はこうだ。
- 定期的な1on1・食事でのコミュニケーション
- ミッション・ビジョン・バリューの言語化と継続的な発信
- 「あなたに期待していること」の明示
- 採用・人事に関する有益な情報の提供
- 小さな案件から始め、徐々に稼働ボリュームを増やす
ポイントはギルドのような感覚を作ること。
「発注する相手」ではなく「同じ方向を向いて動く仲間」という空気感が、エンゲージメントを高める。
稼働が増え、信頼が積み上がり、双方の理解が深まったとき、「そろそろ正社員でどうですか」という会話が自然に生まれる。
プール→正社員転換のときに踏んではいけない地雷
一つ、大きな落とし穴がある。それは、業務委託時代の雰囲気のまま正社員になってしまうことだ。
良好な関係だったからこそ、「今まで通り自由にやってください」という空気になりがちだ。しかし正社員として迎える以上、期待する役割・稼働・責任の水準は変わる。
転換前に就業規則・評価制度・期待値を文書化して丁寧に伝えることが必須だ。仲が良いまま曖昧に進めると、入社後に双方が傷つく結果になりやすい。
フリーランス疲れが、今の採用の追い風になっている
見落としてほしくないトレンドがある。フリーランスや業務委託で独立した方の中に、正社員に戻りたい人が増えているという現実だ。
独立当初は自由で良かった。でも気づけば一社とがっつり関わりすぎて、正社員と変わらない働き方に。
営業も自分でしなければならず、保障もなく、メンタル面への影響も出てくる。
「フリーランス疲れ」を経験した人材は、スキルがあって実務経験も豊富だ。
なおかつ安定を求めているため、組織へのフィット意欲が高い。業務委託でまず接点を作り、その方の志向を見極めた上で正社員へ招くのは、タイミングさえ合えば極めて効果的な手法だ。
とはいえ、正社員には正社員のメリットがある
業務委託プール戦略を推奨してきたが、「ずっと業務委託でいい」とは言っていない。組織を本格的に拡大していくフェーズでは、正社員雇用のメリットが確実にある。
- ロイヤルティの高さ ── 帰属意識は業務委託と段違い
- 機密・重要業務の委任 ── 法務・経理・採用戦略など、外部に任せにくい領域がある
- 長期育成への投資 ── 研修や評価制度が機能し、人材が育つ
- 組織文化の醸成 ── チームの一体感は、正社員比率と密接に関係する
事業と利益を見ながら「踏み切る」判断ができるのがCHROの役割
採用は人事だけの話ではなく、経営の話だ。
「利益がこのラインを超えたら正社員採用に踏み切る」「このポジションは業務委託では任せられない」という判断を、事業数字と連動して下せるかどうか。
それこそが、人事戦略を担う者が果たすべき本質的な役割だと考えている。採用活動の質を上げるには、事業の解像度を上げることが先だ。
まとめ:採用の本質は、エンゲージメントだ
- 採用しようとしているポジションを「正社員必須か、業務委託スタートで良いか」に仕分けする
- 過去に関わった業務委託人材のリストを作り、定期的な連絡を再開する
- 正社員転換を想定している方に、就業規則・期待値を文書化して事前に共有する
- 「利益のこのラインを超えたら正社員採用に踏み切る」という判断基準を言語化しておく
- 採用に悩む前に、まずエンゲージメントを設計する。それだけで、人材獲得のゲームルールは変わる。
「ウチの採用ミスマッチ、根本から解決したい」
「採用を『コスト』から『投資』に変える戦略を一緒に考えてほしい」
「机上の空論ではない、現場で使える採用の仕組みが知りたい」
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